ダライ・ラマ 回想(6)
July 7, 2007 (The Star Festival: wish on a star!)

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(『ダライ・ラマ 回想(5)』より続き)

再度言う。ダライ・ラマを「裸の王様」にしてはならない。
タブーにしてはならない。

仏教徒のあるべき姿勢を、ダライ・ラマは常々こう語っているー

「盲信してはならない。対象を十分に吟味・検討した上で信じるか否かを判断する必要がある」

これは、いわゆる「科学的アプローチ」と同意だ。その根底には冷静な批判精神がある。(以前読んだ本の中で、敬愛する故カール・セーガン博士〈天文学者〉も健全な批判精神を伴う科学的アプローチの重要性を繰り返し説いていた。)

信仰とは、時折、絶対的な帰依(すなわち、絶対服従)を要求する。それは、「真理(=解脱、悟り)」にたどり着くための信仰の、ある種、重要な側面なのかもしれない。しかし、「オウム事件」を出すまでもなく、人類の歴史を概観すれば、それを俗で利己的な人間たち或は宗教団体が人間(信者)を支配・コントロールするために都合良く利用してきたという悪しき面ばかりが目につく。

無批判な「盲信(=絶対服従)」の危険性を最も熟知している一人がダライ・ラマその人なのだ。そして、「盲信」の危険性はダライ・ラマ自身に対しても例外であってはならない。それが、仏教徒たるダライ・ラマに対する真に誠実な態度と言えるだろうし、チベット難民のチベットを真に解放するという「大義」を側面からサポートすることに繋がると信じて疑わない。

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さて、ダライ・ラマが引退宣言し、「チベット問題」が未だ停滞したままで今後も長期化が予想される中、チベット難民、サポーターは今後何をしていくべきなのだろうか。

キー(軸)となるのは、ダライ・ラマ自身も切望する、政教分離し近代化及び民主化されたチベット(人)社会の創設だろう。その新たな「難民社会」が「チベット問題」を解決して行く上で中国政府と対峙・交渉する“母体”となっていく。

そこで、先ず取り組まねばならないのは、高い専門性とリーダーシップとを兼ね備えた若い人材の育成・登用だ。

そのことに関して、99年のインタビューの際にツェワン・テソン氏(当時、亡命政府外相)は示唆している。

「『チベット問題』や難民にマスコミや世界の人々は関心を示してくれてはいるが、その大半は、ダライ・ラマ個人に対する関心からだと認めざる負えない。世界では色々な問題が次から次へと目まぐるしく起こっている。だから、ダライ・ラマが退けば、『チベット問題』が世界の関心を失う可能性は非常に高い。このことを難民の若い世代は良く理解し、難民コミュニティーを支え、『チベット問題』に対する責務を自覚し果たして行かねばならない」

チベット難民をサポートするあるアメリカのNGOはこの重要性を良く認識しており、セレクトしたチベット難民の若者たち(一般人)をリーダーとして養成する”リーダーシップ・プログラム”を世界各地で行っている。

伝統・慣習を相対化・客観視でき高い専門性を有する一般人である「彼ら(彼女ら)」が“主役”となり、今後、難民コミュニティーをまとめ導いて行く必要がある。 一方、“特権階級”の末裔が大半を占め、完全に政教分離されていない「チベット亡命政府」は一度解体し再編成するのが望ましい。つまり、改革だ。正に、「中世」から「近代(現代)」への脱皮に相違ない。

日本のサポートグループもそのアメリカの「プログラム」を大いに参考にすると良い。年に一度デモを組織しスローガンを叫んだり、難民に衣服等の物資を送ることを否定はしない。それも必要だろう。だが、「チベット難民」はつい最近発生した“戦争・紛争難民”とは訳が違うことは理解されているのだろうか。

ダライ・ラマがインドへ亡命してから約50年が経過し、難民コミュニティーが世界各地に作られている(中には商売で成功したリッチな連中もいて、そのことが、貧しい地元民との軋轢を生んだりもしている)。他の難民(アフガン、アフリカ、イラクなど)とは、状況、性質共に違うのだ。故に、サポートの方法も自ずと異なってこよう。このことを再度十分に認識してもらいたい。

プラス、「中国政府」という強大且つ狡猾な相手と対峙している状況とを再認識した上で、行く先(未来)を見据えたサポートを考えてもらいたいのだ。換言すれば、サポート運動の段階的レベルアップが必要ということ。同じ様なことばかりして自己満足していてはだめだ。あなた方はもっと出来る。再度、先述の米のNGOの「サポートプログラム」を参考にして頂きたい。

チベット難民を留学生として日本の大学で学ばせる。或は、日本企業で「企業研修」という形で専門知識・技能を修得させる("on the job training")など、将来を見据えた具体的なサポートの有り様は幾らでも考えつく。後は実行のみだ。「チベット、法王様(ダライ・ラマ)大好き。難民を助けたい!」と言っている裕福な御夫人や著名な芸能人の方々、そして、会社の重役の方々、是非、率先して力を貸して頂けませんか?

日本に課された役割の一つとして、「チベットと中国の橋渡し」も重要だ。

日本は両者共に歴史的・文化的な深い繋がりがある。本来、欧米に先んじて、日本が両者の仲介役とならねばならないはずだ。

「チベット問題を考える議員連盟」というものがある。これまで実質的な働きは何もしていないが、是非、この橋渡し役を中心になって担って頂きたい。先ずは、「チベット難民」と「中国知識人・民主活動家」が公の場で話し合える会(シンポジウム)を日本で催して欲しい。これは、日本の幅広い層に「チベット問題」を認識して頂く上でも急務だといえる。

余談だが、枝野幸男衆議院議員(民主党)が2005年に「議連」の新代表に就任したそうだ。前任の牧野聖修氏(民主党)の落選が理由らしい。はて、枝野氏は「チベット問題」の内実(歴史背景、文化、民族など)の基礎知識をお持ちなのだろうか。今まで、この問題で彼の名前を聞いたことがない。付け焼き刃な人事でなければ良いのだが...

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「私は一介の僧侶に過ぎない...政治的な役割を終え、仏道修行に専念したい」

ダライ・ラマは幾度となくその偽らざる気持ちを吐露してきた。ダライ・ラマとしての人生の残された時間はそう長いことではあるまい。この辺りで、一般の難民達が共同してその政治的な役割を引き継ぎ、ダライ・ラマの真摯な望みを叶えてあげるべきだろう。

チベット仏教ナンバー3、弱冠22歳のカルマパ17世にダライ・ラマの役割を引き継ぐことを期待する向きもあるが、全くお門違いだ。彼は何のために危険を冒して中国を逃れ2000年にインドへと亡命したのか。中国では抑圧されていた仏道修行を自由に行うためだろう。政治ではない。それに、彼が引き継げば、ダライ・ラマの目指す「政教分離」は出来なくなる。またしても整合性の破綻になってしまう。

ダライ・ラマには若いカルマパと共に、政治的なしがらみから離れて、自由にのびのびとチベット仏教の保持・普及のために活動して頂こう。更に、ダライ・ラマには大きな使命が残されている。言うまでもなく、「非暴力」を世界に広めることだ。これこそが、ダライ・ラマとして今生を生きる主たる目的であると信じる。この本来の活動が、意図せずして「チベット問題」解決への世界のサポートを増やすことになるはず。

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そして、我々だ。全ては我々に託された。「チベット問題」を巡る本当の「闘い」はこれからだ。それは、我々一人一人の人間としての意志と本質(本性)が試される「闘い」でもある。

ダライ・ラマの「引退宣言」は、どこか、ブッダが臨終の際に弟子のアーナンダに説いた「自灯明 法灯明」の教えのようではないか。

「この世で自らを島(灯明)とし、自らをよりどころとして、他人をよりどころとせず、法を島(灯明)とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ」

今こそ、各々が責任感と自覚とを持ち、「チベット問題」の解決に向けて、そして「非暴力」を世界に拡大させて行くために、一人一人が「ダライ・ラマ」と成るべき時なのではないか。

私は、ダライ・ラマの「引退宣言」をそういうメッセージとして捉えている。

I do thank the Dalai Lama for his activities.

What will you do?

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